処分前提のクリスマスツリーについて

ホテルのイベント運営スタッフから3メートルのもみの木をクリスマスツリーとして飾りたいという相談を受けた。

予算のことなどを確認したあとでクリスマス後のツリーの処遇を尋ねると、破棄するつもりだと返事があった。

短期的な目線で見ると、たしかに巨木を恒常的に置いておくのは邪魔になるだろう。

そして翌年もクリスマスシーズンになれば新しいもみの木を買って処分するという消費的なスタイルもあるだろう。

が、単年ごとに新調されたもみの木ではホテル側も特に愛着もない消費的で事務的なオブジェとして毎年クリスマスに登場することになる。

 

けれど、長期的に考えることができれば、単年で処分を繰り返すよりも、もみの木を地植えすることで、日々シンボリックに聳え立つもみの木としての価値を見出せるのではないだろか。

コスト面でも単年毎に買う費用と植え込みと年間維持費を勘案すればさほど差がないはずである。

 

またホテルという施設においては経年によるエピソードを塗布できるという観点も重要になる。

なので、最初の納品段階でホテルオーナーにもみの木を選ばせておくだけで、後年「初代オーナーが惚れ込んだもみの木」として価値を高めていくこともできるし、訪れた人から生まれる細やかなエピソードを集めて、幸福の木だと謳うこともできる。

それらをSNSやメディアに好意的に発信することで持続的な価値を湛えたもみの木になればコスト以上の役割を発揮してくれるはずである。

 

数年前に「世界一のクリスマスツリープロジェクト」みたいなことで、それをプロデュースしていた植物業界の寵児が炎上したのもツリーのリユース前提とした取り組みだったけれど、それが似非サステナブルで、むしろビッグプロジェクト特有のエゴイスティックな匂いがしていたからである。

 

わたしは別段サステナブルの推進者ではないが、些細なことでヒートアップしてしまうこの現代ではホテルなどは常に時代に即した態度を取る方が良いのだろうなという所感でした。